日本早期認知症学会

挨拶

理事長に就任して − 本学会の目標と社会的役割 −
 
JSED 理事長 湯浅 龍彦
私は、本年9月熊本市で開催された第17回学術大会(小林清市大会長)の席で第3代理事長に推挙されました。前理事長志村孚城先生には5年間を掛けて会の基礎を築いて頂きました。私の役割は、本学会の目的を再確認すると共にこれまで築かれた基盤に則って会員の皆様と一緒に本学会の進むべき方向性を明確にし、社会的役割を果して行くことであろうと考えております。
会員の皆様には既に十分ご承知のようにわが国は少子高齢化の中にあって、Dementiaが大きな社会現象となっています。これは社会基盤をも危うくする大きな問題です。そうした中で私自身が本学会に期待する第一の理由は本学会の名称にあります。今から17年も18年も前に、現在ほど早期発見早期治療が問われる以前に、いち早く早期の病態が重大であるとの考えを持たれ、それを会の名称にとり入れられた先輩諸氏の先見性には驚きを禁じ得ません。その後の歩みの中では蹉跌もありました。しかし、それも皆様の頑張りで乗り切り、そして今や時代の波が本学会の活動にシンクロし、社会的な期待が高まることとなって来たのです。本学会々員である我々一同は臨床人として、科学者として、社会の一員として、国民の期待にどう応えて行ったらよいのか、会員一同、真摯に実直に力を合わせて、新たな潮流を作ろうではありませんか。
我々が対象とする認知機能障害を呈する疾患には多くの神経変性疾患が含まれます。パーキンソン病、レビー小体病、前頭側頭葉型痴呆症、進行性核上性麻痺、多系統萎縮症、そしてアルツハイマー病などがそれです。これらの疾患では、中枢神経系に蓄積する様々な異常蛋白が知られていて、これらにどう対処するのかが大きな課題となっています。因みに本年度のノーベル生理学賞を受賞された大隅博士のテーマが、まさに細胞内の老化蛋白を排除し、再利用する機序であったわけです。慢性の経過をとるこうした神経変性疾患の治療戦略は現在大きく4つのカテゴリーで進められようとしています。第一は、欠落した物質(例えば神経伝達物質)を補う、第2は、蓄積する異常な物質を排除する、第3は、原因遺伝子の働きを止めたり、危険因子を取り除いて発病を食い止めることであり、第4は、障害箇所を修復し(iPS)、機能再建(脳リハビリテーション、ロボット介入など)をはかるというものです。しかし、一方Dementiaの治療のスペクトラムは広く、こうした生物学的な手法のみに留まるものではありあせん。早期に正確に診断する技術の開発、危険因子の特定と対策、患者をケアする技術の向上、QOLを高め、患者家族が安心して過ごせる社会の整備まで、ワイドスペクトラムの考え方をしなくてはならないのです。
時代はまさに認知機能障害を生じる病態の原因の究明、機序の解明、早期診断技術の開発、早期治療法の開発、患者家族が安心して住める社会基盤の整備などが緊要な課題として取り上げられようとしているのであります。こうした広範な要請に応える為の準備は本学会には揃っています。即ち、本学会の特徴は多彩な人材からなる会員にあるからです。構成員の職種をみても、医師・看護師・リハビリテーション専門職などの医療職、介護職などの福祉職、工学者などの基礎科学者、そして地域での患者家族を守る施設開設者、言語・心理・栄養・薬理の専門家など、極めて多くの人材が揃っているのです。こうした多職種の方々が同じ問題に立ち向かっているところに本学会の特質があります。ですので、私はこうした本学会の特徴を引き出し、機動力を高めたいと願います。その為にはまず理事会を改組しその機能性を高めたいと考えました。そして、多彩な陣容を誇る代議員の先生方の活躍の場を最大限に広げたいと考えます。会員がそれぞれ個別に実施する研究テーマは勿論ですが、学会として共通課題を掲げて共同研究ができるよう整備したいと考えるのです。可能ならば治験も出来るような基盤整備をしたいと考えます。代議員の先生方の出身母体、或いは出身地域での研究会などもサポートできるような体力を作って参りたいと考えます。
かくして、私は本学会の理念を以下の様に考えます。(1)目前の1例を大切にする(一例から学ぶ)、(2)小さなサインを見逃さない(初めは必ず小兆である)、(3)新たな概念をつくる(即ち言葉創造)です。そして、本会会員は同じ目的に向かう仲間として(1)和を尊び(和尊)、(2)共に究め(共究)、(3)歓びを齎す(齎歓)に努めて頂きたいと考えます。こうした我々の行為の源泉は国民の期待に応えんとする魂にあり、少子高齢化社会に戸惑う人々に安心の見通しを示したいとする信念に基づくべきです。
(平成28年10月29日)
 
印刷用PDFおよび過去のご挨拶
新年のご挨拶(2016/1/1)
就任のご挨拶(2015/3/1)
年頭のご挨拶(2014/1/1)
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第12回日本早期認知症学会 終了のごあいさつ(2011/02/16)
志村理事長より念頭のご挨拶(2011/01/12)
理事長・副理事長就任のご挨拶(2010/04/19)
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